グループディスカッション(GD)とは何か?
グループディスカッションは日本の就活で行われる選考過程の1つです。企業から与えられた課題についてグループで話し合い、時間内に結論を出して発表するという流れで行われます。グループの人数や与えられる時間、課題は様々あります。
グループディスカッションのテーマは、与えられた課題に対する明確な解決策を提案するものから、抽象的なテーマで自由な発想力を求められるもの、「何をする?」「どこにする?」「どうする?」などを決定するものまで様々です。以下にいくつか出題例をあげます。
●「外国人観光客をターゲットにしたベンチャー企業のビジネスモデルを構築せよ 」(コンサルティング会社)
●「物を売る際に必要な力は何か」(金融会社)
●「今後の旅行業界はどのような業界と手を組んでいけばいいか」(旅行会社)
●「通年採用をすべきか否か」(総合商社)
(出典:Unistyle「グループディスカッションに頻出テーマ89例」より)
グループディスカッションの進め方
グループディスカッションはおおよそ30分から1時間ほどの時間で行われます。大まかな流れは次のとおりです。
1.挨拶・役割・時間配分の設定
自己紹介は、グループディスカッションが始まる前にしておくことが望ましいですが、その時間がなければグループディスカッション開始後すぐに簡単な挨拶をします。
その後、各メンバーの役割と時間配分を決めます。役割は「リーダーがいい」とか「何の役割も持っていない人は落ちる」などとは一概には言えません。あくまで、引き受けた役割を果たし、グループに貢献しているかどうかが見られています。むしろ、引き受けたにもかかわらず十分に役割を果たせなかった場合は、マイナス評価がつく可能性もあるということを知っておいてください。
時間配分は、30分〜1時間ほどの時間制限をどう使うか、についてグループ内で合意することです。あらかじめ時間配分を決めることで、時間が足りなくて結論が出せないという最悪の事態を避けることができます。しかし、この時間配分を決めるために時間をかけてしまうと本末転倒です。ざっとでいいので1分以内に決めましょう。
2.目的の設定
与えられた課題に対して、グループの目的を設定し、話すべきテーマを決めます。課題に出てくるキーワードについて深く考えることで、グループの目的は設定しやすくなります。例えば、「満員電車を減らす施策を考えてください。」という課題が与えられた場合、キーワードとして「満員電車」「減らす」「施策」の3つが挙げられます。これらのキーワードについて、以下のように考え、目的を設定します。
● 「満員電車」とはどういう状態の電車か?乗車率が100%を超えている状態?乗り降りに規定以上の時間がかかってしまう状態?
● 「減らす」の判定基準はどうするか?乗車率を減らすとして、10%でも減らせばいいのか?100%未満にすることなのか?
● 「施策」とは誰が行う施策なのか?政府が実施するものか?自治体か?鉄道会社か?会社か?その組み合わせか?
3.議論し結論を出す
目的に沿って、グループ内で意見を出し合います。自分が意見を出したあとは、具体的な事実などの根拠を述べましょう。また、一通り意見が出たところで内容を整理していきます。よく、意見が割れた時に多数決で結論を決めてしまう就活生がいますが、多数決は良い方法とは言えません。一見、過半数の主張が通っているので、合理的に思えますが、多数決に論理性はありません。結論は全員が納得する形で出す必要があります。
4.発表
グループディスカッションの最後に発表がある場合があります。グループ内で出した結論をわかりやすく説明する必要があります。また、発表資料などを作成する必要がある場合は、その準備時間も考えて議論する必要があります。発表者以外も、質疑応答で答えたり発表者の補助をしたりなどできることは多くあります。
例えば、発表者が質問を受けて答えるとき、グループディスカッションで使用したメモを手渡したり、複数の質問を受けている場合には、忘れないよう質問内容をメモして手渡したりなども立派な貢献です。
グループディスカッションでの役割
グループディスカッションでは、まず役割を決めます。次の3つが代表的な役割となりますが、先ほども述べたとおり役割についたからといって必ずしも良い評価になるとは限りません。自信があれば役割についてもいいですが、なければ役割につかずに議論に集中したほうが得策でしょう。
司会(リーダー)
話し合いを進行していく役割です。メンバーが出した意見をまとめていったり、あまり発言ができていないメンバーに話をふったりなどとても目立つ役割です。面接官にリーダシップやコミュニーケーション力をアピールしやすい反面、拙さも目立つポジションです。独りよがりの態度を取ってしまったり、議論を間違った方向へ導いてしまったりすると、印象が悪くなるので注意が必要です。
書記
書記は、メンバーが出した意見をメモして、全員に共有する役割です。書記の人が陥りがちなことは、メモを取ることに必死で議論に参加できないということです。いくら必死にメモを取ったとしても、意見を出せなければ、グループへの貢献度は低く見られてしまいます。
タイムキーパー
タイムキーパーは、グループで合意した時間配分を適切に管理します。他のメンバーにただ時間を伝えるだけではなく、議論の進捗度合によっては、最初に決めた時間配分を変更するよう提案もします。時間が足りなくて結論が出せない・・・となってしまわないようタイムマネジメントを徹底する必要があります。
グループディスカッションでは何が見られているのか?
グループディスカッションで企業は、就活生の対人能力やチームで成果をあげる資質を見ています。就活は「自分が志望企業に合格するかどうか」なので見落とされがちなのですが、企業がほしいのはチームパフォーマンスに優れている人です。
なぜなら、新卒採用を行なっているほとんどの企業は、個人の能力に依存することなく稼ぐ仕組みを持っている組織であり、チームの中で自らの役割を果たしてくれる人を採用している限り、収益を上げ続けることが期待できるからです。※だからこそ、職歴や実践的な仕事のスキルを持たない新卒を採用しているのです。
チームパフォーマンスを発揮できる能力・資質をいくつか紹介
「対人能力」や「チームで成果をあげる資質」がグループディスカッションでは見られていると話しました。具体的にどういった能力・資質なのかをいくつか見ていきましょう。
リーダーシップ
グループのメンバーをまとめ、導く力です。時間内に結論を出せるよう話し合いの方向を決めたり、全メンバーが参加するよう発言の少ないメンバーに意見を聞いたりするなど、グループ全体を見る力が求められます。よく勘違いされるのが、自分で決めることがリーダーの仕事ではないということです。そうではなく、各メンバーの合意を得てグループとして決めることがリーダーの仕事です。
コミュニケーション能力
自分の意見を理解してもらえるよう伝える力と他の人の発言の意図を汲み取る力との2つで構成されます。伝える力の代表例として数字や具体例を用いて説明することや他の人への反対意見を述べるときに「確かに●●という点はわかりますが、」などと相手への配慮を示すクッション言葉を使うことが挙げられます。
発想力
多様な視点から新しい意見を出せる力です。発想力は一瞬のひらめきである場合もあれば、緻密な論理的思考の末に導き出されるものもあります。自分自身にあった方法で自由に発想しましょう。
グループディスカッションでやってはいけないこと
グループディスカッションの対策で最初にやるべきは「やってはいけないこと」を理解することです。いかにうまくグループディスカッションをやるかではなく、いかに失敗することなく終えるかという観点で対策する方が良いと思います。なぜなら、あなたがどれだけいい準備をしても、当日一緒のグループに入る他のメンバーが優秀でなかったら、あなたの思った通りに物事は進まず、せっかくのいい準備も無駄になるからです。
一方で「これだけはやらないようにする」というのは、他のメンバーが優秀でなくても実践がしやすいです。最悪、グループの全員が以下の4つのケースさえ避けられれば、グループディスカッションは形を成します。
グループとしての結論を出さない
これはグループディスカッションにおいて最もやってはいけないことです。グループの全員が落とされてしまう可能性もあります。もし、制限時間が迫っても結論が出ていない場合、自ら結論を提案して、多少強引でもその提案をグループの結論にしてしまうのが良いです。そのくらい、グループとしての結論を出さないことはグループディスカッションにおいてご法度です。
発言をしない
発言しないのも避けるべき行動です。たとえよく分からないテーマであっても、いいアイデアが浮かんでいなくても、他の人の発言についてどう思うかくらいは発言できるはずです。また、他の人の意見を書き出し、「ここまでの話を整理しましょう」と言って議論を整えるのも良いでしょう。
人の意見を聞かず、自分の意見を押し通そうとする
他の人の意見を聞かなかったり、頭ごなしに否定したりすると、協調性がない人物とみなされて評価が低くなります。また、発言量を増やそうとして自分の意見を主張しすぎることは、他の人の貴重な意見を消してしまうことにつながるので、これも評価が低くなります。
課題の意味をよく考えずに議論を開始する
グループディスカッションの課題は、想像以上に深いものです。なんとなくの理解で議論を始めてしまい、グループの他のメンバーも同じようになんとなくの理解で議論をしてしまうと、検討すべきことを検討していなかったり、逆に考慮しなくてもいいことを考慮したりして、そのグループがたどり着く結論は拙いものになってしまいます。
グループディスカッションを安定的に突破するには
「やってはいけないこと」を理解することがまずは大切なのですが、それだけだと突破できるかどうかは運によるところが大きくなってしまいます。グループディスカッションを安定的に突破するには、グループの議論をうまく導き、良い結論を生み出す力が必要です。以下では、安定的にグループディスカッションを突破するための簡単な方法を取り上げます。
過去のグループディスカッションのテーマを頭に入れておく
グループディスカッションのテーマは毎年新しくなっており、まったく同じテーマが来る可能性は高くないのですが、議論の進め方には一定のパターンがあります。また、間違えてしまう部分も結構似通っており、事前にいくつかのグループディスカッションのテーマを頭に入れておくと当日の議論が進めやすくなります。
グループディスカッションで自分ができることを明確にしておく
グループディスカッションで自分が活躍できることを予め明確にしておきます。想像しやすいのはアイディアをどんどん出すことでしょうが、これはあまりおすすめしません。グループディスカッションは短い時間の中で議論を収束させなければならないところ、新しい意見が出されると逆に議論が拡散してしまうからです。
それでは、どういった役割や機能が良いのでしょうか?おすすめなのは①課題の趣旨について議論を導く、②議論の検討軸を1つ足す、③結論の方向を絞るです。詳細は長くなるので別の記事で取り上げます。
あらかじめ仲良くなっておく
グループディスカッションで発言をするとき、全員に聞いてもらうのが難しい状況やタイミングがあります。そういうとき、隣の人だけに聞いてもらい、その人と二人で全体に対して発信をするというテクニックがあります。特に、留学生の皆さんは単独で発言すると日本人たちに無視されてしまうことが残念ながらあるので、始まる前に同じグループになりそうな席の近い人と雑談をしておいて、あらかじめ仲良くなっておくといいでしょう。これだけでグループディスカッション本番で発言しやすくなります。