外国人労働者のLiberal Arts-日本の年金の仕組み

公開日時 : 2022年02月28日

更新日時 : 2022年06月12日

日本の年金制度

年金制度は様々な国にあり、働けなくなった人たちを支える役割を果たしています。ですが、細かく見ると内容は国ごとに少しずつ異なります。

日本の年金制度の大きな特徴は、国民皆年金という日本に住んでいる人全員が年金に加入しなければいけないという点です。そのため、外国籍の人でも年金を払わなければいけないのです。今回は、日本の年金制度について細かく見ていきます。

支払う年金

皆さんが支払う年金には2種類あります。

・国民年金(基礎年金)
・厚生年金

国民年金は、日本に住む20歳以上の人は強制的に加入となります。厚生年金は企業で働く会社員や役所や学校などで働く公務員が、国民年金とは別で加入しなければいけないものです。厚生年金に加入すると、受け取る年金の金額がより高くなります。

自営業やフリーランスで働く人は、加入するのが国民年金のみになってしまいますが、その場合でも、国民年金基金に加入すれば、厚生年金と同じようにより高い金額の年金をもらうことができます。

加えてアルバイトやパートタイムで働いている人に関しては、条件次第で厚生年金に加入できます。

詳細な条件は社会保険についての記事からご確認ください。

ちなみに、結婚している人で一年間の収入が130万円以下の場合は、条件を満たせば自分で支払う必要はなく、フルタイム等で働いている配偶者の負担にすることができます。これを第三号被保険者と呼びます。

また20歳以上でも、収入が少なく払えない場合は、保険料免除・納付猶予制度が使えます。また、学生の場合は学生納付特例制度を利用できます。このような制度を使うことで月々の年金を払わなくて済んだり、払うのを一定期間待ってもらったりできます。

学生納付特例制度について知りたい場合はこちらの記事をご覧ください。

もらえる年金

年金は年をとってからもらうもの、という印象が強いですが、実はそれだけではありません。もらえる年金は全部で3種類あります。

老齢年金

老齢年金は原則として65歳からもらうことのできる年金で、年金を支払うか免除された期間の合計が10年以上あれば、もらうことができます。そして、老齢年金はもらい始める時期を早くしたり、遅くしたりできます。

早くする場合は60歳からもらうことが可能で、これを繰上げ受給と呼びます。繰上げ受給をすると、毎年もらえる年金の金額は65歳からもらい始める場合よりも低くなるので注意しましょう。

逆に、遅くする場合はいくらでも遅くすることが可能で、これを繰下げ受給と呼びます。繰下げ受給をすると毎年もらえる年金の金額は65歳からもらい始めるよりも高くなります。ただし、75歳以降はいくら繰下げても金額が上がらなくなるため、75歳になったら年金をもらい始めるのが得策です。

遺族年金

遺族年金は、年金を支払っている人、もしくは年金の受給資格を持っている人が亡くなったときに、その家族が受け取ることのできる年金です。この家族の定義は基礎年金と厚生年金で異なります。

どちらの場合でも必ず遺族年金を受け取る人は、前年の収入が850万円未満、または所得が655万5千円未満でなくてはいけません。

障害年金

障害年金は、日本に在住している間の病気やけがによって仕事がしづらくなったり、できなくなったりした場合にもらうことのできる年金です。障害年金をもらえる要件も基礎年金と厚生年金の間で違いがあります。

年金は実際いくら払う?

国民年金は4月から翌年の3月まで支払う金額は一定です。ちなみに2021年4月から2022年3月までの支払い額は、毎月16,610円、一年で199,320円です。この金額は毎年変わっており、増えることもあれば減ることもあります。

国民年金を6ヶ月、1年、2年といずれかの期間分を前もって納付する場合、一定額の割引がされます。これは前納制度と呼ばれます。

厚生年金は、自分が働いて得た給与やそれ以外の交通費などを加えた金額(標準報酬月額)、またはボーナスなどの賞与(標準賞与額)に18.3%をかけた金額になります。

例えば、標準報酬月額が20万円だった場合、支払う年金は36,600円になります。しかし、その負担は会社と折半になっているため、実際に自分で支払うのは、18,300円になります。

いくら年金を支払っているか確認したいときは、給与から引かれている厚生年金の金額の二倍であると覚えておきましょう。

ちなみに、厚生年金を支払っている人は、同時に国民年金を納めていることにもなっているため、追加で国民年金を納める必要はありません。

年金はいくらもらえる?

国民年金は、支払い額と同様、4月から翌年3月まで一定額もらえますが、毎年増えたり減ったりしています。2021年4月から2022年3月までの受給金額は、毎月65,075円、一年で780,900円です。ただし、この金額は年金を40年間ずっと一回も欠かさずに納めてきた場合にもらえる老齢基礎年金の金額です。支払った期間によっては大きく減ってしまうため、注意しましょう。

遺族基礎年金と障害基礎年金は、最低額が780,900円となっており、結婚相手や子どもがいたり、障害がより重度だったりした場合は、その分の額が加算されます。

厚生年金は、支払った期間に加え、上述の標準報酬額によって金額が異なります。複雑な計算になっているため、シミュレーションサイトやアプリなどを利用すると良いでしょう。ちなみに、厚生年金も結婚相手や子ども、障害の重さなどの要素によってもらう額が上がることがあります。

老齢厚生年金のシミュレーションサイトで実際に計算してみる。

加入する・払う・もらうときの手続き

加入するときの手続き

年金に加入するときの手続きですが、仕事に就いてから初めて年金に加入する場合は、会社が主な手続きを行ってくれます。

しかし、学生などは国民年金に加入するために自分で手続きをする必要があります。手続きをする際は、パスポート在留カードのどちらかが必要になります。手続きの方法は住んでいる地域ごとに異なりますが、たいていの場合、役所や役場の窓口で直接手続きを行うことができます。届出期限は日本に来てから原則として14日以内ですが、期限を過ぎてもさかのぼって届出することができます。

年金に加入したとき必ずもらうのが年金手帳です。これはほとんどの年金に関する手続きで必要になりますので、必ず大切に保管しておきましょう。

支払うときの手続き

次に、年金の支払いをするときですが、厚生年金に加入している場合は会社が毎月支払う給料から事前に差し引いているため、自分で支払いをする必要がありません。

国民年金に加入している場合は、自分で支払いの手続きをする必要があります。支払いを行うには、日本年金機構から送られてくる「領収(納付受託)通知書」を持ち、銀行や郵便局、コンビニエンスストアに行って支払う方法、「Pay-easy(ペイジー)」で支払う方法、クレジットカードで口座から自動引き落としをしてもらう方法の3つがあります。手続きをするには、年金手帳が必要になります。

もらうときの手続き

最後に年金をもらうときの手続きです。老齢年金では、受給資格を得る65歳の3ヵ月前に「年金請求書(事前送付用)」が送られてくるので、こちらに必要事項を記入し、年金事務所に郵送か直接提出をすることで、年金をもらうことができます。

障害年金では、年金手帳や住民票、医師の診断書などが必要であり、遺族年金では、年金手帳や世帯全員の住民票、死亡診断書などが必要になります。

これらは基礎年金と厚生年金のどちらを受けるかで提出先が異なり、基礎年金では基本的に役所や役場の窓口に、厚生年金では年金事務所に提出することになります。

帰国後も年金を無駄にしない方法

日本の年金は10年間払えば、海外でも必要な手続きを経ることで年金を受け取ることができます。一方、10年間払わなければ、日本の年金をもらうことはできません。

それでは、支払期間が10年未満の場合、その支払った分の年金は無駄になってしまうのでしょうか?ご安心ください。答えはNoです。日本は2022年現在、23ヵ国と社会保障協定を締結しており、それらの国から日本へ来ている場合、日本で年金を払っていれば出身国でも年金を払ったことになります。

ただし、イギリスや中国など一部の国との協定では、そもそも日本で年金を支払う義務が発生せず、日本に居ながらにして出身国の年金を払うだけで済む、というものもあります。よくわからない場合は、日本年金機構の社会保障協定から確認しましょう。

さて、社会保障協定を結んでいない国の出身の人はどうすればいいのでしょうか?それにも対処法があり、帰国によって年金に加入しなくなった場合、それまで年金を払った期間に応じた脱退一時金を受け取ることができます。

脱退一時金を受け取ると、それまで払っていた期間の記録はなくなり、もし日本に戻ってくることがある場合は、また一から受給資格を得られる10年分を払い始めなければいけません。また、受け取るにはいくつか条件があるので注意しましょう。

詳細は脱退一時金の記事をご覧ください。

まとめ

年金の仕組みはかなり複雑で、正しく理解している人は多くありません。強制的に加入させられる上に毎月の支払い金額は高いため、家計にも大きな負担がかかります。日本で働く皆さんは、少しずつでも年金に関する知識をつけていくことをおすすめします。もし、その他生活のことなどでもわからないことがあれば、無料でご相談にのります。

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